その二人組みは何も無い暗い空間を歩いていた。 いや、そこには確かに路があった。陰の様な路である。 「あの暴走車を操縦できる奴がいるのならその面ぁ、拝んでみたいね。全く」 「あぁ、暴走皇子ね…見つかったみたいだよ。」 「あ゛?」 「操縦者が」 「はぁ〜?聞いてねえぞそんなこと!!」 「当たり前だよ、聞いてなくても。だって、この話の発生源は皇帝だよ?」 「それなら尚更納得できねぇよ!!」 当たり前である。皇帝の所まで話が行くまでには、それはそれは沢山の取次がある のだ。ならば、どこかから噂が出るのは必然といえよう。だが、今回は一切そのよ うな情報は無い。別段、極秘情報ということでもなく、むしろ喜ばし限りなのだ。 あの皇子に関しては。 「別段、不思議じゃないよ。だって、直接皇子が話し持ってきたってことだもん」 「何?皇子が自らだと?その皇子を探していて、見つけられずにいる俺たちゃまさ か、無能か!?」 「そうでもないんじゃないの?なんたって僕たちが一番近くまで来てたみたいだか らね」 と、少し皮肉っぽく笑んで彼は言った。 「それにしても…あの、暴走車を操縦できる奴ってどんな奴だ?そうとうなもんだ ぞそいつは」 「普通の人間のお嬢さんらしいよ」 「・・普通…ね」 「そう普通だよ」 (皇帝がいう普通ほど普通でないものは無い…) 「人間、ね。さて、皇子はどんな奴を選んだんだかね…」 その人間の行く末を哀れに思いながらため息をつき、やはり何も無いように見える 暗い空間…空を仰いだ。 --------------------------------------------------- 下層民が住むスラム街。 そこは建物が入り組み、ごみごみした場所。昼夜に問わず薄暗い。薄汚いなりはこ こでは、通常のものとなる。反対にこぎれいなものは、ここでは異常なのだ…そこ かしこから臭気が漂う。 少女は歩いていた。 10にも満たないであろう少女である。やはり少女も例に漏 れず、薄汚かった。白かったであろう貫頭衣は、薄汚れ茶色に変色してしまってい る。その貫頭衣を一枚きりしか着ていないようだ。少女の髪はボサボサで一回も櫛 を通したこともないのであろう。またその肌は地の色が分からないくらいに汚れて いる。ここの子供たち格好の多くはこんなものである。 ――― 少女は歩いていた… ここには上等な身分の者は足など運ばない。ここは犯罪者の街としての顔も持つのだ から… だが、そこにありえない光景があった。 一行は白かった。 白い上等なローブを着、その上に銀の刺繍がされている上掛けを羽織った一行であっ た。 この一行は何なのであろうか?何のためにこの様な場所に足を運んだのだあろうか? 危険を冒してまで足を運ぶ事柄とは? 住人たちはこの光景を訝しみながら、または邪な想いを抱きながら眺めやる… その中に老人がいた。老人が呟く。小さく小さく呟く。感慨深げに。 「月の雫」 呟きは聞こえぬ。誰にも聞こえなかった。誰も聞いていなかった。 しずしずと一行は進んでいく。住人は眺めている。いつも騒がしいそこは、静かに静 まり返っている。一行は進む、進む…そして、どのくらい来たときであろうか。や がて、止まった。小さな小さな影の前で停まった。 その影はあの少女であった。 少女は泰然としていた。不自然なほどに、神々しいほどに… 白い彼らは、当然というように、自然に少女に足を折った。そして、少女も当然と いうようにそれを受けた。 彼らの一人が口を開いた。 「お迎えにあがりました。"月の雫(みこ)"様」 白い一行が去っていく…小さな少女を伴って。 老人は呆然と、陶然と、誇らしく、呟く。 「嗚呼…、あの伝説は本当だった。"月の雫"はここから生まれる。ここからしか生 まれない…古き原初なる民からしか生まれない。我々の誇り、我々の希望。この古 き地からしか…」 老人は涙を流す。濁った視界に少女を映して。 どこかで、笑った。誰かが。 「見つけた。俺の半身…」 呟き…笑った――― そうして、伝説は再び始まる。 |
あぁ、とうとう書いてしまった。小説…この話、でだしだけしか考えてないので どうなることやら…途中で挫折するかも…(-_-; ま、まぁ生暖かく見守ってや ってくださいませ…。 自分的にはこの“月の雫”という話、半身の憂鬱とか言い換えている話だったりして… それはおいおい分かってもらえると… |