月の雫
−2章−


 この世界の中央に位置するのは、カネンリー・ドグゥ国。この国の王都がある場所、即ちカナル・ パウティが『古き地』と呼ばれ、世界の中央とされている。ここが"月の雫"の生地と言われている のが所以である。
 また、それは事実であり、この地からしか"月の雫"は生まれない。で、あるから して、カナル・パウティは聖地とされ、中央神殿もこの地に配されている。自然、ここが"月の雫" の所在となるのは当たり前のことである。

 "月の雫"の働きはこの世界を保つための魔力の循環…魔力の管理者、魔力の司と言っても過言ではない。 "月の雫"はやがて魔王に嫁ぐ。魔王の次代を生むために。それは世界のためであり、自らのためでもある。
 魔王は世界を保つための魔力を生み出す存在であるからして、無くてはならない存在だ。だが、彼らはその力を生み出すだけで、 その方向性をつけることが出来ない。彼らは別次元に在り、世界に直接触れていないために世界との結びつきが弱いためだ。そこで媒介となる"月の雫"が必要なのだ。
 "月の雫"は魔力の方向性を決め振り分ける役目を果たす者、ということだ。月と同様にその身に魔力を溜める。  このことこそが"月の雫"が魔王に嫁ぐことにつながる。なぜなら、その身はやがて魔族になるからだ。 その身に溜めた魔力は次代の魔王となる者に受け継がれるものであり、また長年魔力を留めることによりやがて魔力に影響され、 その身は魔王を生むために負担の少ない魔族の身体に作り変えられる。
 だが、あくまで"月の雫"の役割は世界を保つためのものである。魔界は異次元にあるため、嫁ぐとなると世界から離れなくてはならなくなる。 次代の魔王を生むまでは数百年はかかる。その間も"月の雫"としての働きをせねばならない。媒介としての役目を。 そのため、嫁ぐ前に世界と深く結びつくために各地の神殿に赴かなければならない。そこは魔力の流 れの要に当たる場所であるからだ。当代の"月の雫"の波動に慣らすためだ。いわゆる受信機の調整に行くよ うなものである。
 こんな経緯から"月の雫"は魔界に赴く前に巡礼の旅にでる。本来ならば、こんな変則的な巡礼ではないは ずなのだが…。今回は変則的尽くしらしい。
 マグノリアは前々から準備をしていたのだと言った。彼女の部屋は綺麗に片付けられ、 いつでも旅に出られるようにされていたのだ。ついでに妹のエリスの準備もエリス本人には知らされていなかったようだが…。
 このようなことから、カルスムスとあった日の内に王都を出た。
 カルスムスは挨拶などはいいのか、と聞いたがそっけない返事が返ってきただけっだった。曰く、「面倒く さい。書置きを残してきたから大丈夫だろう。」だった。

 (あぁ、神官たちは大変だったろうな…彼女の扱いが。可哀想に…)

 カルスムスは少々神官たちに哀れみを覚えたのは仕方が無いことかもしれなかった。





この続きは何時になるか…なんかもう漫画も小説も気まぐれ連載になってる。