月の雫
−1章−


その言葉に「そうか」とあっさり頷き、差し出された手を取る。
青年は少し拍子抜けした気がした。喜べとは言わないが、こうなんかあるのではなかろうか?やはりこの少女は普通と違うようである。なんといっても、数刻もたっていない最初の出会いがあれである。まぁ、普通でない自分には釣り合うのかもしれない。後にこの時、何故あっさりと手を取ったのかと訊いたカルサムスに彼女は、「その時が来ることは分かっていたからだ」と答えた。だから、準備はしていたのだ、と。

「一つ、頼みがある。」
マグノリアは真剣な表情でカルサムスの顔を見ている。
「ん?妹さんのこと?」
「そうだ。一緒に連れて行ってくれ。」
「大丈夫。一緒に連れて行くよ。最初からそのつもりだったから。」
その言葉にマグノリアは訝しげにカルサムスを見つめる。
「まぁ、こっちにも事情があってさ。本当は魔界こちらがわも"月の雫"が一人だと思っていたんだよね。こっちにも例外が起こっててさ、皇子が2人居るんだよね。これが」
そういって、あっさりと事情を暴露する。
「だからさ、そんなすまなそうな顔しないでよ?エリス?だっけ」
そう言って、エリスに視線をやり優しく微笑んだ。
「はい〜」
ホッとしたようにエリスも顔を綻ばせる。
「そうして笑っていなよ、エリス。その方がマグノリアも安心するよ。」
うんうんと自分の言葉に頷いて、
「良かったな〜あいつ。あいつの好みピッタリじゃないか。」
この言葉に"月の雫"である2人は首を傾げる。
「誰のことを言っているんだ?」
マグノリアは尋ねた。
 "おかしい。何かがおかしい。違和感を感じる。私は何かを勘違いしている…?"
「ん〜?弟?」
「弟?誰の?」
「俺の」
しばしその場は沈黙に支配された。
そして驚愕。
「じゃ…皇子?お前が?私の相手?」
「え?そうだけど?」
「普通、皇子自ら来ないぞ!!だって、前回の時も配下が来たはず!!」
「あ〜母上…?。いいじゃん。前は前。俺は普通じゃないし?」
「えと〜皇子様…」
「え?いいって、カルって呼んでよ。弟と仲良くしてやってな?」
「はい〜カル様」
「お前がもう一人居るのか…」
「あ、勘違いしてるな?言っとくけど正反対だよ、俺と」
「胸張っていうなそんなこと!!」

旅立ちの時は近づいていた。そして、時は騒がしく過ぎる―――





今回の更新は少しばかり早いですね。
でも、話し短いしっ。精進せなな。(少し遠い目)
今回は暴露話になっております。カルに弟居ます。裏話(短編も書きたい)。
それより“とっとと本編書けっ”と言われそう。