月の雫
−1章−
-創世神話-

 神は一人そこに在(い)た。
 暗い昏い世界。何も無い世界。空虚な世界。神だけが在る世界。
 空間が有るのか無いのか…そこにはそれすら存在しなかった。
 黒いのか白いのかも分からない世界。
 神はその全てに飽いていた。一人、何も無い世界に…。

 故に…
 神はまず、確かな空間を創った。暗闇が、常夜が支配し、広がる世界を…。
 そこに星々を創りだした。
 光る星、光らない星を創りだした。
 それらは神の目を楽しませたが、それだけだった。

 神はその星々の中から一つの星を選び出し、そこに生命を創りだそうと考えた。 自らと同じような意思あるものを創ろうと。そのための世界を創ろうと考えた。
 その星を一つの世界として機能するように、その世界の力を創りだす者として、 神は自らの力を分け与えた神の分身というべき者を創りだし、別の意識を与えた。 その者に寿命*という制限を課した。
 (*ここの寿命とは力を放出し終り消滅することだという)
 ここに第一の生命が誕生した。

 神が神の力を分かつそのときにいくらか零れた力があった。その力は神にとっては 微々たるものではあった。だが、それは一つの小さいとはいえ星を創りだした。そ の力は生命を育むであろう星に程近い外の暗闇に留まり凝り固まった。この星が"月 "となった。
 この"月"は不思議なことに力を惹きつけることが出来た。力は“月"に吸い寄せられ 蓄えられた。その力はある一定の方向に働いた。"月"は力が働く方向を定めること が出来た。それは月光としてやがて地上に降り注ぎ恵みを与える役目も果たした。

 神は次に大地や水などの自然を創りだした。そのとき自然を司る者として龍が生ま れた。彼らは自然の管理者であり自然を造りだす力を持つ者たちであった。彼らは 第一の生命である者たちが生み出す力を受けて生まれた者たちであったが故に、元 から意思を持つ者として生を受けていた。また、そのために寿命も持っていたが、 この寿命は第一の生命よりも短いものであった。
 ここに第二の生命が誕生した。

 神は第一の生命が生み出す力が、その世界において正しく機能していないことに気 づいた。そこで神はその力を受け行使するのみの生命を創りだした。彼らはただ与 えられるものを消費するのみの生命だった。
 ここに第三の生命が誕生した。

 彼らはやがて「人間」と呼ばれる者たちだった。

 他に第三の生命と同じ目的で創られた生命があった。彼らは生きるために生きる生 命であった。彼らは第三の生命と違い、意思はあったが知識・意識が薄かった。ま た、寿命も短かった。
 ここに第四の生命が誕生した。

 それでも、第一の生命が生み出す力は自然界に溢れ出した。それはやがて、溢れ出 したところから薄い形を纏っていった。それは精霊と呼ばれた。
 ここに第五の生命が誕生した。

 第五の生命以外にも妖精・魔物などが誕生した。これらは突然別の空間から溢れ出 した力から生まれてくるもの、力によって後天的に生み出される者たちであった。
 ここに第六の生命が誕生した。

 神は第一の生命が生み出す力が余りに無秩序であることを憂いた。そのために生命 が育まれるはずの世界は混沌としておりうまく生命が育まれなかった。第一の生命 が生み出す力は"月"が在っても世界から余りにも生命にとっては離れすぎ遠く及ば ず、抑えきれなかった。
 ゆえに第一の生命を世界から間をおくため、次元の異なる異界を創りそこを住処と するようにした。また、地上には"月"が長年蓄積した力を零し落とす雫を掬いあげ 地上に遣わし、第一の生命に与えた。そうすることによってやっと世界は安定した 。神はそれに満足した。神はやっと一人ではなくなったのだった。

 だが、そこには光が存在しなかった。神は自らを光る星の姿に換え永き創造の疲れ を癒す微睡みに就いた。

 その光る燃える星が"太陽"である。

 地上の者たちに大いなる恵みを与え育むことになった…






なんか第1章とかいって創世神話持ってきたけど。これのみになってしまった。
こんな予定ではなかったはずだが…なぜこうなったのか…
わ、分からない…(-_-; なぜだろう。